研修医アンケート結果で見る「新卒歯科医師の採用」のために抑えておきたいポイント
今回の記事では、歯科医師の新卒採用の傾向について、過去に行った、研修医が対象のアンケート結果から一部を抜粋して紹介します。2027年卒の、歯科医師の新卒採用を考える際、参考としてご覧ください。
新卒歯科医師採用の背景
💡ポイント
・新卒歯科医師の採用活動が活発化
・採用イベントが定着し、動き出しの時期が早まっている
・大学側での歯科医師への就職支援は手薄な場合がある
近年、新卒歯科医師の採用活動が活発化しています。
就職イベントは年々活況を呈しており、「イベントを利用して就職活動をしたい」と考える学生の方も、「イベントに出たい」と考える歯科医院も増えてきています。イベントによっては出展枠が早期に完売することもめずらしくありません。
採用イベントが定着し、動き出しの時期が年々早まっています。
歯科医師・歯科衛生士ともに、就職活動の動き出しが早まっています。就職活動に関して「何から始めればいいかわからない」と考え、4月に開催の採用イベントに参加して、積極的にいろいろな歯科医院のブースを回って話を聞く方が大勢います。
歯科衛生士と異なり、大学側での歯科医師への就職支援は手薄な場合があります。
歯科衛生士の場合は、専門学校や短大の、キャリアセンターや就職課に相談をしながら就職活動を進めることが少なからずあります。一方で歯科医師の場合には、そういった学校による就職活動指導などは基本的にありません。
歯科医師を目指す学生の多くは、大学内の先輩や同期などと情報交換や相談をしながら就職活動を進めていきます。外部の人から話を聞く機会があまりないことで、偏った情報や間違った情報に影響されていることもあるため、採用イベントなどで交流を持ちながら、外部の人の立場で正しい情報を発信し、相談を受けられる関係性を作ることも重要です。
MEMO:採用活動の早期化に伴い、学生との早期接触がますます重要になっています。
研修医アンケート結果①|進路検討と見学希望
研修医の"4月時点”の意識についてアンケート結果を紹介します。
💡ポイント
・進路を検討中の方は全体の71%(2023年4月時点)
・勤務医志望は25%、大学院希望は4%
・77%の方が3院以上の医院見学を希望
図1:研修医後の進路(2023年4月時点)

4月時点で進路を検討中の方は全体の71%
アンケートを行った4月時点では、約7割の方が進路を決めかねている状況でした。秋口くらいには、検討中の方の割合が減り、勤務医として働くのか、大学院に進むのかを決断した学生が増える見込みです。(図1)
勤務医志望は25%、大学院希望は4%でした。
4月時点では、25%の学生が勤務医として働くことを希望していました。大学院に進むことを希望している学生の割合は4%です。
77%の方が3院以上の医院見学を希望しています。
「見学したい医院数」を「1医院」と答えているのは、学生の15%でした。全体の85%は複数医院を見学したいと答えており、77%の方が3医院以上の医院見学を希望しています。
MEMO📝:研修医は複数医院を比較・検討し、慎重に就職先を決めようとしています。
研修医アンケート結果②|決定時期と重視点
就職先の決定時期と、就職先に求めるものについて見ていきます。
💡ポイント
・勤務先の決定は年内(12月まで)に行う方が75%
・重視する条件は「勤務地(27%)」「給与(21%)」「仕事内容(19%)」
・教育面では「丁寧な指導」「マニュアル完備」「先輩が優しい」といった点が重要視
図2:勤務先の決まった時期
勤務先の決定は年内(12月まで)に行う方が75%です。
早い学生の場合には、6、7月に勤務先が決まります。その場合、4、5月には医院見学を始めているため、歯科医院側も早めの行動が大切です。(図2)
重視する条件は「勤務地(27%)」「給与(21%)」「仕事内容(19%)」の順でした。
歯科衛生士に比べると、歯科医師は勤務地を重要視する割合が少し低い傾向です。学べる内容や導入されている設備などを勤務地よりも重要視する傾向にあり、そういった条件をクリアする勤務先を見つけるために、勤務地の範囲を広げる学生も多くいます。
教育面では「丁寧な指導」「マニュアル完備」「先輩が優しい」といった点が重要視されています。
「丁寧な指導」を重視する学生は全体の35%に上っています。「マニュアル完備」「先輩が優しい」といった項目も重視されており、教育体制が整っている歯科医院が好まれる傾向です。
〈POINT〉
早い段階から採用イベントに参加したり医院見学をしたりしている学生は、就職に対する方向性や意識を明確にしており、高い決断力を持っている場合が多いです。早く内定を出せば、その分、入職までの継続的な接触が多く求められることにはなりますが、早い段階で決断できる学生は優秀である可能性が高いということも頭に入れておきましょう。
MEMO📝:条件面と教育体制の両面を重視する傾向が明確に見られました。
研修医アンケート結果③|キャリア志向
次の項目では、キャリア構築の考え方について見ていきます。
💡ポイント
・「勤務医として長く働きたい」方が57%と最多
・「開業希望」は31%、「親の医院を継ぐ」は12%
・女性歯科医師の増加により、勤務医志向が一般化
図3:将来の方向性について現在考えていること

「勤務医として長く働きたい」方が57%と最多
全体の約6割が「勤務医として長く働きたい」と回答しており、現在の学生の働き方・生き方に対する考えが現れている結果となっています。(図3)
「開業希望」は31%、「親の医院を継ぐ」は12%
「親の医院を継ぐ」と答えた学生の割合は全体の1割程度となっています。自分の人生を長い目で見た時に、親の医院を継ぐのがいいのか、開業するのがいいのか、勤務医として働き続けていくのがいいのか、さまざまな選択肢を自分で考えて選べる時代になってきたことが読み取れます。
女性歯科医師の増加により、勤務医志向が一般化
歯科医師国家試験の受験者の4割強は女性となっています。今後は、産休・育休制度が整っているかどうかなども、採用活動の成功に影響を与えると考えられます。
採用トレンドと地域差
最後に、採用のトレンドと地域差について紹介します。
💡ポイント
・就職イベントの活性化により、複数接点を得られる機会が増加
・地方では進路決定時期が早く、都市部ではやや遅れる傾向
・コンプライアンス対応が求められています
就職イベントの活性化により、複数接点を得られる機会が増加しています。
就職イベントは、就職活動中の学生と歯科医院が直接交流することのできる機会です。就職イベントは近年活性化しており、学生とコミュニケーションをとれる機会は増加しています。
地方では進路決定時期が早く、都市部ではやや遅れる傾向があります。
歯科医師・歯科衛生士ともに、一都三県よりも地方のほうが進路決定時期が早い傾向です。歯科医院側は、そのような地域差も踏まえながら採用活動を行っていく必要があります。
労働条件や環境を明示する医院が増え、コンプライアンス対応が求められています。
働きやすい環境を重視する学生が増え、多くの歯科医院が採用活動において労働環境をアピールするようになってきています。今後さらにこの流れは加速すると考えられるため、不足している部分がある歯科医院は、早い段階から環境の整備に努めたほうがいいと考えられます。
MEMO📝:地域・時期に合わせた柔軟な採用戦略と情報発信が効果的です。
FAQ
Q.新卒歯科医師を面接する際のポイントはありますか?
A.将来のビジョンや社会性に関する質問、志望理由についての確認をしておきましょう。
・「親の医院を継ぐ」「勤務医として働き続ける」など、将来のビジョンを確認し、そのために医院ができることなどを伝えておくと、学生に安心感を与えることができます。
・「アルバイト経験があるか」などを確認しておくと、社会の厳しさやビジネスマナー、金銭感覚などを確かめることができます。
・「ほかの医院ではなく、なぜうちの医院を選んだのか」を聞いて医院に対する理解度を確かめましょう。すり合わせをしておくことで、入職後のギャップを防ぎやすくなります。
まとめ📝:新卒採用は計画的な運用とフォロー体制の確立が成功の鍵となります。
