歯科衛生士の採用が難しい3つの理由と成功ポイント

歯科衛生士の採用が難しい3つの理由と成功ポイント

2025年02月17日

どうして歯科衛生士の採用は難しい?

多くの歯科医院が、歯科衛生士の採用を難しいと感じています。

いざ採用活動を進めようとしても…

見学から面接につながらない
応募数が増えない
見学・面接のキャンセルがなくならない
そもそも何からはじめたらよいかわからない
医院の理念を理解してくれる人を採用したい

このような問題に悩んでおられる方も少なくありません。

7割の自治体で歯科衛生士が不足

自治体に向けたアンケートでは、都市部、非都市部を問わず、7割の都道府県が「歯科衛生士が不足している」と回答しました(33/47)。
(平成27年度歯科衛生士復職支援事業実施状況調査結果)

また、毎年約7,000人が歯科衛生士名簿に登録されますが、2024年の新卒歯科衛生士に対する求人人数倍率は「21.8倍」。
(全国歯科衛生士教育協議会「歯科衛生士教育に関する現状調査の結果報告」)
この数字からも需要に対して供給が追い付いていない状況がわかります。

なぜ、歯科衛生士不足が続いているのでしょうか。


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歯科衛生士の採用が難しい理由

まずは採用市場から応募者の意識まで、背景となっている要因をいくつか挙げたいと思います。

1.経営面への貢献度による高い需要

日本の歯科医療では特定の人材を配置する義務はありません。ですが実際は、約8割の歯科医院で歯科衛生士を雇用しています。

それは、経営上、欠かせないメリットがあるからです。

2012年4月の歯科診療報酬改定後から、歯科衛生士の勤務の有無によって、歯科医院の保険収入の増減に差が出ているというアンケート結果があります。(全国保険医団体連合会が発表した「2013 年度歯科会員アンケート最終集計結果について」)

これによると、歯科衛生士が勤務している歯科医院では保険収入が増加した割合が18.2%であるのに対し、勤務していない歯科医院では5.4%。逆に保険収入が減少した割合は、歯科衛生士が勤務している歯科医院は47.7%、勤務していない歯科医院では69.9%となりました。

歯科衛生士による加算や治療内容の充実が、経営面にポジティブに影響しているといえます。歯科医療が予防・口腔管理へシフトする流れで、歯科衛生士の需要が高まっています。

歯科衛生士が勤務することによる加算とは

保険診療の診療報酬には、歯科衛生士が在籍していないと算定できない加算や治療内容があります。

たとえば、「⻭科外来診療環境体制加算」は、歯科医師が複数名在籍しているか、歯科衛生士が1名以上在籍している歯科医院が、初診料や再診料を高く設定できる制度です。

口腔管理体制強化加算(こうかんきょう)」「歯科治療時医療管理料」も同様に、歯科衛生士の在籍で加算できる項目です。

歯科衛生士が主治医の指示を受けて患者さんにブラッシング指導などを行う「歯科衛生実地指導料」や「周術期等専門的口腔衛生処置」は、歯科衛生士が実施することで算定できる項目です。この他、訪問歯科診療でも歯科衛生士の在籍や同行によって、診療報酬が高くなるしくみがあります。

2.人材の流動性が大きい

上記のような背景で需要は高まっていますが、供給が安定しないために採用が難しくなっています。

歯科衛生士名簿の登録者数29万8,664人(※令和2年歯科医療振興財団の事業報告)に対し、就業者数は14万2,760人というデータもあり、歯科衛生士免許を持っている人のおよそ15万人が歯科衛生士という職にはついていないという現状があります。

歯科衛生士の働き方として、20代前半で入職して、結婚や育児等をはさんだ後、落ち着いたタイミングで再入職する傾向があります。理想的には就業数が右肩上がりに増えるはずが、20代後半から30代前半で一定数が離職。いわゆる「M字カーブ」を描いています。

年代別の就業歯科衛生士数

復職後は、勤務時間・日数はプライベートとのバランスを取り非常勤での働き方が増えます。この流れも常勤スタッフ採用の確率を下げる要因です。ただし近年、40代以降の就業者が増えていることはポジティブな要因でしょう。

3.働き手のニーズの多様化

休暇の取りやすさや残業の少なさといったワークライフバランスを実現できる職場環境が求められています。売り手市場であり、働きやすい環境を求めて転職するパターンもあります。

子育て世代は保育園・幼稚園の利用時間を考慮して「勤務時間」を優先し、20代の若年層も今は給与より「休日の多さ」を優先する傾向です。働き方改革以降の価値観の変化も大きな要因としてあるでしょう。

求人サイトGUPPYの求人条件検索でも「オープニング」や「移転」を除くと「週休3日」「土日祝休」といった休日に関するキーワードがよく検索されています。

また、他業種やほかの医療職と比較した待遇の違いも離職率を上げる要因となります。
歯科衛生士にとって長く働きやすい環境を作ることが、採用の難しさを解消するための一歩になるといえます。

歯科衛生士の採用活動を成功させるポイント

では、具体的にはどのような方針を持てば人手不足を解消できるのでしょうか。

離職・定着対策

まず大切なのは、採用を考える前に早期離職や定着のための対策を講じることです。歯科衛生士にとって働きやすい環境になっているかどうか見直しを行います。

歯科衛生士一人当たりの業務負担が大きくなりすぎていないか、主任や同僚と円滑にコミュニケーションが取れる環境か、教育制度があるかなどを確認して改善します。また、歯科衛生士の待遇改善を図ることも大切です。給与はもちろん、福利厚生や休暇制度などを見直すことで、他院との差別化を図りやすくなります。

特に休みの取りやすさは採用視点では重要です。週休3日、土日祝休など休みが多いほど採用には有利となります。

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自院の分析・採用ターゲットを明確にする

自院の理念・強みの整理

採用活動の中では、

自院で働く魅力は何か
・現状足りないどんな部分をあなたにお任せしたいか
・なぜあなたが良いのか

これを伝える必要があります。

そのためには、

・どのような医院か
・どのような課題があるか
・今どんな人に来てほしいか

これらを言語化しておく必要があります。また、他の医院とは違う魅力を認識し、整理して伝える必要があります。

求職者を理解する

求職者の考え方、行動、ニーズなどを理解する必要があり、それらを理解した上で、はじめて求職者にとっての自院の魅力を訴求することが出来ます。

採用したいと考える歯科衛生士像を、新卒者と経験者に分けてそれぞれ具体的に定めることで、適切なアプローチを行えるようになります。

アトラクトする

人手不足の今、応募を待って面接するだけでは難しい状況となっています。候補者に興味を持ってもらう、惹きつける採用活動を「アトラクト」といいます。

面接に至るまでの求職者の行動を考えると、院内の環境整備と並行して行いたいのが、職場の魅力発信です。若い世代を中心に、SNSなどを利用して事前に職場の雰囲気を確かめたうえで応募を行う求職者が増えています。SNSや採用サイトを活用し、歯科医院の魅力や働くメリットを積極的に発信することも大切です。「アトラクト」は求人原稿、メールのやりとり、見学、面接などすべてのコミュニケーションで一貫して行います。

効果的な採用チャネルの活用

さまざまな方法で採用候補者に興味を持ってもらうこと。その基本となるのが、求人サイトや転職エージェントです。ハローワークや民間の求人媒体を利用しての採用活動は、日本全国の求職者に対して広くアプローチができるというメリットがあります。特に、歯科業界に特化した求人媒体であれば、より絞られたターゲット層にダイレクトに求人広告を見てもらえるという利点があります。

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歯科衛生士の中途採用はどう行うべき?

医院独自での募集と媒体を利用しての募集方法があります。

医院独自での募集

・医院のサイトに求人情報を掲載する
・知り合いの伝手をいかしてダイレクトに採用活動を行う
・自社の社員に推薦してもらうリファラル採用
・人材紹介会社を利用する

媒体を利用しての募集

・転職サイトを利用する
・求人誌やフリーペーパーなどに求人情報を掲載する
・ハローワークに求人情報を掲載する
・企業や大学が主催する合同就職説明会に参加する

リファラル採用という方法があります。これは、すでに働いてくれている従業員から友人や知人の歯科衛生士を紹介してもらう方法です。候補者の人柄やスキルをある程度把握したうえで採用ができること、早期の離職リスクが低いこと、採用活動にコストがかからないことがメリットとして挙げられます。

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新卒歯科衛生士の採用方法

新卒者を採用するうえで欠かせないのが、歯科衛生士養成校との連携を強化することです。求人票による専門学校や短期大学・大学での求人募集は新卒採用の主力であり、新卒採用者にターゲットを絞って効果的にアプローチができます。ただし新卒者にとっては、職場環境や雰囲気、教育体制などが、学内の求人票ではわかりづらいというデメリットがあります。新卒採用は、求人サイトやWEBメディアのほか就職イベントなどを活用してアピールすることが大切です。いかに医院見学に来てもらうかという点もポイントでしょう。

また、SNSなどを活用しながら多角的なアプローチを図ることが、採用活動の成功率をアップするポイントとなります。

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歯科衛生士が求める「理想の職場」とは?

他院との差別化を図り、採用競争に勝つためには、歯科医院の魅力をアピールすることが大切です。では、どのような職場環境であれば、歯科衛生士にとって魅力となるのでしょうか。

業務内容が志向性と合っている

まず仕事内容に関しては、予防業務を中心に行っていきたい歯科衛生士と、さまざまな業務に取り組みたい歯科衛生士とで、希望がわかれる傾向があります。

・やりがいを感じられるから、業務の大半は予防処置がいい
・幅広く業務を担当させてもらえると飽きずに続けられる

歯科衛生士によって感じ方が異なるため、医院の方向性も採用活動で打ち出せるとよいでしょう。

ただし、どちらの場合でも、希望があれば新しいことにチャレンジできる環境や、いろいろな機材を使用してスキルアップできる環境があることが、歯科衛生士にとってのやりがいにつながる傾向があります。また、そのように上司や同僚に遠慮なく意向を伝えられ、信頼して任せてもらえる環境があることも働くうえでの満足度に直結しています。

休憩時間・休暇のとりやすさ

さらに、休憩時間や休暇の取りやすさも、働きやすい環境を作るうえで大事なポイントです。

一日の中でまとまった休憩時間がとれている、細切れでない
・希望に合わせて休暇がとりやすい
・長期休暇がとりやすい
・休憩スペースが清潔、または確保できる

このあたりが重視されるのは、一般企業の基準が求められてきていること、また、歯科医院全体で休暇制度が整っている背景もあります。
しっかり休めることは、長く働けるかどうかを歯科衛生士が見極めるうえで欠かせない要素です。

休憩スペースの状態も毎日働くうえでは重要なポイントとなります。

評価制度・福利厚生

そのほか、人事評価の対象項目や評価の基準が明確になっているか、スタッフ育成の機会が定期的につくられているか、福利厚生が充実しているかなども、求職者が重要視するポイントです。

安定した人間関係

医療職は感情労働であり、スタッフの心の健康への配慮は欠かせません。
緊張感のある場では、風通しの良い人間関係が鍵になります。スタッフが声を上げにくい環境では、スタッフルームでの愚痴など、ネガティブな感情として現れがちです。

・朝礼の時間をつくる
・前向きな意見として発言する場をつくる

などの工夫・改善が重要です。

💡キーワードは豊かさ

特に若年層は「たくさん働いてたくさん稼ぐ」という価値観は少数派。安くていいモノにあふれた今、お金の優先度は下がっています。給与より休みや勤務時間を優先する傾向です。「訪問歯科」がよく検索されている理由も土曜休診によるものです。スキルアップなのか、ワークライフバランスなのか、給与なのか。時代や景気によって変わる歯科衛生士の意識は、現職のスタッフや応募者に直接聞いて把握しておくこともポイントです。

歯科衛生士採用後のフォローと定着率の向上

教育体制とフォロー

歯科衛生士の需要が増加しており、採用が難しい状況だからこそ、採用できたスタッフの離職率を下げ、スタッフが育ち続ける環境づくりが大切です。そのためにまず重要なのが、入社後のフォローを欠かさないことです。メンター制度やOJT制度などを採り入れ、新人スタッフが働きやすい環境を作りましょう。定期的に面談の時間をとるなど、フォローアップの機会を作ることも欠かせません。

中途採用のベテランスタッフでも放任は避けるべきです。職場環境によって業務のやり方や文化も違いますし慣れるまでは不安が伴います。職場に馴染むまではフォローする人をつけるべきでしょう。

新卒者・中途採用者に関わらず、教育制度があることで、安心して働いていくことができます。

キャリアアップの機会創出

また、歯科衛生士が長くやりがいを持って働いていけるように、キャリアパスの明確化やスキルアップ支援を行うことも大切です。定期的に勉強会を開催する、外部セミナーへの参加費用を負担するといった取り組みで、歯科衛生士のキャリアアップをサポートします。

そして、優秀な歯科衛生士に長く働いてもらうためには、評価制度の明確化やそれによる昇格・昇給制度の整備、福利厚生の充実化も大切な要素です。こういった仕組みづくりに努めることで、歯科衛生士の定着率の向上が望めます。

歯科衛生士の採用事例

歯科衛生士採用がうまくいっており、定着率も高い歯科医院には、その理由があります。反対に、採用活動がうまくいっておらず、採用できたと思ってもすぐに退職してしまう歯科医院にも、やはりその理由があります。そのような採用の失敗を防ぐためには、歯科医院の特徴や採用候補者の特性に合わせたアプローチが必要です。

新卒採用を通年で成功させる! 地方歯科医院の教育体制と働きやすさを活かした戦略

地方出身者の方をメインターゲットに採用活動を行っている「高倉町歯科クリニック北八王子・豊田」では、“当院の強みでもある教育体制や働きやすさ、休暇取得のしやすさ、産休育休の実績などの福利厚生面を前面に出すようにしています。地方出身者には、引っ越し費用の支給や、都内と比較して家賃が安い点もアピールポイントにしています。”との言葉通り、新卒者が安心して働ける環境があることを、福利厚生や教育体制の充実度の点から強くアピールしています。
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成功する医院経営のための人材確保/育成法

スタッフと個人面談したときに当院を選んだ理由を聞いたりもしました。まずは良い点からということで意見を聞き、それらをピックアップして求人に載せたりもしました。”と話すのは、3つの歯科医院を経営する「医療法人社団緑幸会」です。この法人では、同規模の医院やターゲットが近そうな医院の求人を参考にし、自院の強みを分析することで採用につなげています。
事例はこちら

そのほかの歯科医院に関しても、採用活動がうまくいっている医院は、定期的に求人広告の文章や写真を見直したり、チームワークや雰囲気の良さが伝わる写真を使ったりするなど、求人広告の出し方を工夫をすることで人材の獲得につなげています。

まとめ

高齢化社会の進行や予防意識の高まりにより、今後も歯科衛生士不足は続いていくと予想されます。そのような状況の中で採用活動を成功に導くためには、採用活動自体を工夫することはもちろん、職場環境を整備することも大切です。医院の理想の構造を掲げ、それにむけて計画的に採用活動を進めることが重要になっています。

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